軽く、耐久性、柔軟性に優れた架空送電線用心材
材料科学 x 高度なより技術。CFCCは炭素繊維の優れた素材特性を最大限に生かしているため、高強度、高弾性、軽量、高耐食性、非磁性、低線膨張など従来のケーブルの常識を越えた特長を発揮します。また、より線状であることから、架線作業に実用的な柔軟性を備えています。
CFCCは何でできている?
CFCCはカーボンファイバーコンポジットケーブル(Carbon Fiber Composite Cable)の略で、直径約7μmのカーボンファイバーと熱硬化性エポキシ樹脂を複合させて撚り合わせたものです。 高強度の特殊樹脂を使用しており ~200℃の温度環境下で使用可能です。
  • より線炭素繊維 x 熱硬化性エポキシ樹脂。
  • 炭素繊維グレードはT-700以上。各ストランドは12,000本のフィラメントで構成。
  • 機械的および電気的保護のために各素線はポリエステル糸のラップ(最小 0.05㎜厚)でカバーされています。
  • 炭素繊維心材CFCC は熱膨張がほとんどないため、高温運用時の ACFR 電線のたるみが少なくなります。
ハイグレード炭素繊維
炭素繊維複合ケーブル
炭素繊維心アルミより線
CFCC®断面図(電子顕微鏡)
ガルバニック保護層:ポリエステル糸の重ね巻き(0.05mm)
なぜCFCC®はより線構造なのか?
より線構造は各素線間に隙間がある為、同じ直径の引抜成形の心材と比較すると断面積/炭素繊維量が少なくなり引張強度が僅かに低くなりますが、同時に以下の利点がもたらされます。
  • 全破断回避構造: 7本より線で芯材の全破断回避性能が向上
  • 柔軟性: 曲げ応力が各素線に分散されることで可撓性が向上
  • 曲げ剛性の低減
  • ダメージ耐性の向上
  • 実用的なハンドリング特性
  • 従来の圧縮型の電線心材把持工法との親和性
各素線が非拘束状態のより線 → 応力分散 → 柔軟性の向上
破断回避構造
図1:CFCC®湾曲部(引張/圧縮)
図2:CFCC®湾曲部曲げ応力の分布
CFCC®の特性
軽量:
質量は鋼材の1/5です。
柔軟性:
より線状で柔軟性と全破断回避構造を備えています。
腐食耐性:
CFCC®の耐酸性は鋼線を上回り、耐アルカリ性は鋼線と同等です。pH値2.25-2.50(60-100℃)の酸性土壌環境にてCFCC®(12.5mm径)と鋼線の暴露試験を三年間実施した結果、鋼線には腐食による引張強度の低下が顕著でしたがCFCCには外観劣化並びに強度低下は観察されませんでした。
CFCC®の耐酸性は鋼線を上回り、耐アルカリ性は鋼線と同等です。pH値2.25-2.50(60-100℃)の酸性土壌環境にてCFCC®(12.5mm径)と鋼線の暴露試験を三年間実施した結果、鋼線には腐食による引張強度の低下が顕著でしたがCFCCには外観劣化並びに強度低下は観察されませんでした。
非磁性:
CFCC®は炭素繊維とエポキシ樹脂によって構成される非磁性の複合ケーブルであり、鋼材のように磁気を帯びないため通電時に鉄損(磁化した時に失われる電気エネルギー)が発生しません。
CFCC®は炭素繊維とエポキシ樹脂によって構成される非磁性の複合ケーブルであり、鋼材のように磁気を帯びないため通電時に鉄損(磁化した時に失われる電気エネルギー)が発生しません。
素材 比透磁率
CFCC 1.000未満
非磁性PC鋼線(18Mrs鋼) 1.002
鋼線 1,200,000
※1,000未満は設備の都合上、測定不能です。
低膨張:
CFCCの線熱膨張係数は鋼の1/10以下であり、ライン通電時や導体温度上昇時のたるみが格段に小さくなります(CFCC用樹脂は200°Cまで耐えられます)
CFCCの線膨張係数は鋼材の約1/10で高温における使用環境下でも伸びが小さいため、熱膨張によるACFR電線の弛みはCFCCによって抑制されます。CFCC®に用いられる樹脂は~200℃の温度環境下で使用可能です。
素材 線膨張係数
CFCC 1.0 × 10*/°C
鋼線 11.5 × 10*/°C
高い引張強度と引張弾性:
試験体: 撚り線CFCC φ1×7-12.5mm(土木用)
引張強度: 1.4〜2.1kN / mm2(鋼材同等以上)
引張弾性係数: 137kN/mm2
高い引張疲労性:
CFCCの疲労限は300N/mm2でありPC鋼より線の100n/mm2を上回る引張疲労耐性を有しています。
低リラクセーション:
定格引張強度の65%の初期張力をかけたCFCCの10,000,000時間(114年)後に予期されるリラクセーション値は3%以下です。低リラクセーションタイプのPC鋼より線と同等です。
試験体: CFCC(7本撚り12.5mm径)
荷重: 92.4kN (定格引張強度の65%)
温度: 22°C
低クリープ伸び:
1,000時間下記条件で荷重したCFCC®のクリープ伸びは0.068%です。ガラス繊維やアラミド繊維等の他のFRPに比べて小さく、鋼材ケーブルと同程度です。
1,000時間下記条件で荷重したCFCC®のクリープ伸びは0.068%です。ガラス繊維やアラミド繊維等の他のFRPに比べて小さく、鋼材ケーブルと同程度です。
試験体: CFCC(7本撚り12.5mm径)
荷重: 92.4kN (定格引張強度の65%)
CFCC®の歴史とACFR®開発
東京製鉄インターナショナルは、炭素繊維複合材料「撚り線」を世界で初めてテンションベアリング部材として開発しました。当社のCFCC ®は、プレストレストコンクリート杭、グランドアンカー、腐食環境下における橋梁用外部ケーブルなど、土木工事用の非腐食性補強部材として開発されました。何年にもわたる広範な研究開発を経て、TRIが開発した世界初の炭素繊維複合導体が2002年に日本に設置されました。私たちの目的は、構造を変更することなく既存の送電回廊をアップグレードし、ROWの公益事業に共通する制約と、まったく新しいラインを建設する時間のかかるプロセスにソリューションを提供するために使用できる導体を開発することでした。高度な撚り線技術と材料科学を取り入れることで、重量や直径、取り扱い特性のペナルティなしに導電性アルミニウムを追加できる、高温低たわみ導体の高強度、柔軟性、軽量、構造的に信頼性の高い新しい引張り軸受部品であるCFCC ®を開発しました。
東京製綱は、世界で初めて炭素繊維複合より線ケーブルを開発した企業です。当初CFCC®は腐食環境下でのプレストレストコンクリート杭、グランドアンカー、橋梁の外部ケーブルなどの土木建築用の非腐食性補強部材用途に開発されました。従来のケーブルを上回る特長を備えたCFCC®を架空送電線にも応用すべく、1980年代からの長年にわたる広範な研究開発を経て、2002年には当社のCFCC®を心材として用いた世界初の炭素繊維心架空送電線ACFR®の運用が日本で開始され、2012年~は電力需要の増加が著しい海外各国の送電線でも採用されています。私たちが目指したのは、電線支持構造はそのままで送電効率のアップグレードを可能にする、軽量かつ増アルミ特性が付加された上で従来工法が適用可能な新しい時代の送電線、ACFR®- CFCC®は、当社が長年培ってきた撚線技術と最新の材料科学が組み合わさる「トータルケーブルテクノロジー」によって開発されました。

CFCC®は1980年代に土木建築用の非腐食性補強部材として開発されました

CFCC®北上工場(岩手県)
CFCC®ミシガン工場(米国)
CFCC ®標準仕様の一例